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認知症介護に疲れたあなたへ|共倒れを防ぐ休み方と相談窓口

公開: 2026年6月6日

認知症介護に疲れたあなたへ|共倒れを防ぐ休み方と相談窓口

「もう限界かもしれない」と感じながらも、「自分が弱いだけだ」と打ち消していませんか。

認知症の介護は、終わりが見えない長距離走です。疲れてあたりまえです。同居しながら介護している主な介護者のうち、約7割が悩みやストレスを抱えているというデータがあります(令和4年 国民生活基礎調査、厚生労働省「同居の主な介護者」)。つまり、あなただけではなく、同じ立場の多くの人が同じ重さを抱えています。

この記事では、認知症介護の疲れがなぜ起きるのか、「休む」ためにどんな手段があるのか、そして今すぐ話を聞いてもらえる窓口をまとめています。

疲れた自分を責めながら読まなくていい。ただ、少しだけ続けて読んでみてください。

【もう限界、というあなたへ|今日できること】

  • 介護のことを相談したい → お住まいの地域の「地域包括支援センター」に電話(無料)。ケアマネジャーがいれば直接「限界です」と伝える
  • 今夜眠れない・気持ちがつらい → 「よりそいホットライン 0120-279-338」(24時間・無料)
  • 「死にたい」「手を上げてしまいそう」 → ためらわず 119・110、または上記ホットライン・地域包括へ。我慢は危険です

詳しい休み方・窓口は、このまま下に読み進めてください。


認知症介護に疲れるのは、あなたのせいではない

介護者の多くがストレスを抱えている

令和4年の国民生活基礎調査によると、同居しながら介護をしている主な介護者の約7割が「悩みやストレスがある」と答えています。これは決して少ない数字ではありません。多くの人が、毎日何らかの苦しさを感じながら介護を続けているということです。

また、同じ調査では介護する側もされる側も65歳以上という**老老介護が63.5%**にのぼることも分かっています(※認知症に限らない、在宅介護全体のデータです)。自分自身も体が衰えてきた中で、さらに誰かを支える。その消耗は、計り知れません。

認知症の方の数は、2024年に公表された将来推計で、2025年に約471万人、2040年には約584万人に達すると見込まれています(厚生労働省研究班、2024年公表)。それだけ多くの家族が、同じ重さを抱えながら暮らしています。

認知症介護が特に過酷な理由

認知症の介護が体力的・精神的にきつい理由は、いくつか重なっています。

まず、**BPSD(行動・心理症状)**への対応です。徘徊(近年は「ひとり歩き」とも呼ばれます)、暴言、幻覚、同じことを何度も聞いてくる——こうした症状は、マニュアルどおりにはいきません。相手の気持ちを読みながら、その場その場で対応し続けるのは、想像以上に神経を使います。

夜中に眠れない・起き出してしまうという問題を抱えている方も少なくありません。介護する側も睡眠を削られ、昼夜を問わずケアが続く状況になります。夕暮れになると落ち着かなくなる「夕暮れ症候群」も、夕方から夜にかけての時間帯を特にしんどくさせる症状の一つです。

そして何より、終わりが見えないこと。骨折の回復とは違い、認知症のケアに「もうすぐ終わり」という見通しが立てにくい。この不確かさが、介護者の心をじわじわと追い詰めていきます。

さらに「できてあたりまえ」という空気の中で、うまくいかないたびに罪悪感を感じてしまう。でも、どうか覚えておいてください。あなたが疲れているのは、それだけ真剣に向き合ってきた証拠です。


それは介護うつのサインかもしれない|2週間以上続いたら確認を

介護者は「抑うつ症状」を抱えやすい

在宅で認知症の家族を介護している人を対象にした日本の調査では、3割以上が抑うつ症状を抱えていたという報告があります(Arai et al. 2014、CES-Dという質問票で一定以上の点数だった人の割合)。これは「うつ病と診断された割合」そのものではありませんが、介護者の心が消耗しやすい状況にあることを示しています。

これは「介護者が弱いから」ではありません。睡眠不足、孤立、先が見えないストレス——気持ちが落ち込みやすい条件がそろっているのです。

2週間以上続いていたら、一度確認を

以下のような状態が2週間以上続いている場合は、心療内科やかかりつけ医への相談を検討してみてください。自己判断で抱え込まず、いまの状態を専門家に確認してもらうきっかけとして。

これらは「気持ちの問題」ではなく、心と体が限界に近づいているサインである可能性があります

もし「消えてしまいたい」「死にたい」という気持ちや、「手を上げてしまいそうだ」という恐怖を感じているなら、今すぐ相談してください。

よりそいホットライン:0120-279-338(24時間・無料)

「いまこの瞬間、自分や相手が危ない」と感じたら、迷わず 119(救急)・110(警察) や、お住まいの地域包括支援センター・担当ケアマネジャーにも連絡してください。追い詰められているときに、一人で抱え込まないでほしいのです。


【現役看護師コラム】「休む=逃げ」ではなく「続けるための技術」

看護師・介護福祉士として15年、多くの介護家族と関わってきました。

その中で何度も目にしたのが、「もっと早く相談してくれれば」と感じるケースです。本人のことが大切だからこそ、誰にも言えずに一人で抱え込んでいた。ある日突然、介護者自身が倒れてしまう。そういう場面を、私は何度も見ています。

ある方は、家族にも友人にも「大変なんて言えない」と笑っていました。でも夜中に一人で泣いていたと、後から話してくれました。ショートステイを利用してから「こんなに楽になっていいんでしょうか」と、少し申し訳なさそうに言った顔が忘れられません。

**介護者が倒れると、介護が続けられなくなります。**それは介護を受けている本人にとっても、誰の得にもなりません。休むことは逃げではなく、介護を長く続けるための技術です。

虐待は「支援不足と孤立と過負荷」が引き金

令和6年度の調査では、養護者(家族など)による高齢者虐待の相談・通報件数が41,814件、虐待と判断された件数が17,133件にのぼります。虐待を受けた高齢者の半数以上に、認知症の症状がみられたという報告もあります。

この数字を見て「ひどい家族がいる」と思う人もいるかもしれません。でも現場にいると、別のことが見えてきます。虐待に至った多くのケースで、介護者はとっくに限界を超えていた。相談できる場所がなかった。支援につながれていなかった。

**虐待は介護者の性格だけが原因ではなく、孤立や過負荷が背景にあることが多いものです。**ただし、暴力や放置は本人の心身を確実に傷つけます。だからこそ、起きてしまう前に支援につながることが何より大切です。

もし「手を上げてしまいそうで怖い」という気持ちがあるなら、それはあなたが正直で、危機を感じ取れているということです。今すぐ誰かに相談することが、あなた自身と介護相手の両方を守ることになります。虐待の相談や通報は、誰かを罰するためではなく、介護する人とされる人の双方を守るための制度です。


介護者が「休める」仕組みを知っておく|介護保険サービスと地域資源

「休みたいけど、何があるのかわからない」という声をよく聞きます。

介護者の休息につながる「レスパイトケア」には、介護保険で使えるサービスと、地域の支え合いの場(認知症カフェなど)があります。ここでは代表的なものを整理しました。利用できるかどうか・費用は要介護度や地域で変わるので、ケアマネジャーに相談するときの手がかりとして使ってみてください。

日中の負担を減らすサービス

1. デイサービス(通所介護)
日中、専門施設で過ごしてもらうサービスです。介護者は日中の時間を自分のために使えます。食事・入浴・レクリエーションなどがあり、生活リズムが整いやすくなることもあります。

2. 訪問介護(ホームヘルプ)
ヘルパーが自宅に来て、身体介護や生活援助を行います。外出や通院の時間をつくりやすくなります。

3. 小規模多機能型居宅介護
「通い」「泊まり」「訪問」を一つの事業所で組み合わせて使える複合型のサービスです。急な対応にも比較的柔軟に対応できます。

しっかり休めるサービス

4. ショートステイ(短期入所生活介護)
施設に数日単位で泊まってもらうサービスです(連続利用は原則30日まで。費用や空き状況、利用日数はケアマネジャーに確認を)。「数日間、通して眠りたい」という方に向いています。「施設に入れること=見捨てること」ではありません。一時的に専門家に任せることで、介護者自身が回復できます。

5. 訪問看護
看護師が自宅を訪問し、医療処置や療養の管理を行います。「医療的なことが不安で目が離せない」という方の精神的な負担を和らげるサポートになります。

6. レスパイト入院
「介護者が急に体調を崩した」「冠婚葬祭で数日家を空けなければならない」といった緊急時に、一時的に入院という形で医療機関に受け入れてもらう仕組みです。介護保険サービスとは異なり、対応の可否・条件・費用の扱いは病院や地域によって大きく違います。まずは主治医やケアマネジャーに相談してみてください。

孤立を防ぐ場所

7. 認知症カフェ・家族会
認知症の方やその家族、地域の人々が集まり、情報交換やつながりを持てる場所です。「同じ悩みを持つ人と話せた」という安心感は、数値では測れない大きな支えになります。


徘徊への対応に困っている方物を取られたと繰り返し訴えられる方同じ話を何度も聞かされて参っている方は、それぞれの記事も参考にしてみてください。


今すぐ話せる|頼れる相談窓口4つ

1. 地域包括支援センター(無料・全国約5,500か所)

介護の総合相談窓口です。要介護認定を受けていなくても相談できます。ケアマネジャーへのつなぎ、介護保険の手続き、地域のサービス情報など、幅広く対応してもらえます。「どこに相談すればいいかわからない」という方が最初に頼れる場所です。

全国に約5,487か所あり、基本的には無料で利用できます。お住まいの市区町村のホームページや、市役所・区役所に問い合わせると場所がわかります。

2. 認知症の人と家族の会

フリーダイヤル:0120-294-456(平日 月〜金 10:00〜15:00、無料)
※携帯電話から:050-5358-6578(有料)

家族介護者による、家族介護者のための相談窓口です。「愚痴を聞いてほしいだけ」でも大丈夫です。同じ経験を持つ仲間に話を聞いてもらえる安心感は、専門機関とはまた違う支えになります。

訪問看護の現場で、利用者のご家族にこの番号をお伝えすると「話を聞いてもらえただけで楽になった」と言ってくれた方が何人もいました。一人で抱えないでほしいという意味で、私が最初に紹介することが多い窓口の一つです。

3. ケアマネジャー(介護支援専門員)

すでに要介護認定を受けているなら、担当のケアマネジャーへの相談が最も身近な選択肢です。サービスの調整だけでなく、介護者自身の疲弊についても話せます。「限界です」と正直に伝えることで、サービス内容の見直しや緊急のショートステイ手配につながることもあります。

4. かかりつけ医・心療内科

身体症状(眠れない、食欲がない、頭痛が続く)や、気持ちがつらい状態が続いているなら、医療機関への相談も選択肢に入れてみてください。「介護の疲れで来院した」と伝えるだけで十分です。

心療内科や精神科というとハードルが高く感じる方もいますが、「眠れなくて困っている」という相談から始めることもできます。

こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556
※都道府県・政令指定都市が設置する専門相談窓口へつながります(ナビダイヤルのため通話料がかかります。受付時間は地域によって異なります)


よくある疑問に答える|罪悪感を手放すためのQ&A

Q. ショートステイを使うのは、逃げではないですか?

逃げではありません。介護者が休息を取ることは、介護を継続するために必要なことです。ショートステイを利用する間、介護される側も専門のスタッフにケアしてもらえます。「自分が見ていないと不安」という気持ちはわかりますが、その不安を一人で抱え込み続けることが、長期的には双方の状態を悪化させる可能性もあります。罪悪感を持つ必要はありません。

Q. 怒鳴ってしまいました。虐待になりますか?

ここで大切なのは「なぜそうなったか」です。介護疲れや睡眠不足の状態でストレスが限界に達したとき、声を荒げてしまうことはあります。それは介護者が悪人だからではなく、過負荷と孤立の結果であることがほとんどです。

「怒鳴ってしまった自分が怖い」「また繰り返してしまうかもしれない」と思っているなら、地域包括支援センターやケアマネジャーに今の状況を話してみてください。状況を変えるための具体的なサポートにつながれる可能性があります。

Q. 認知症の人は「471万人」ですか?「700万人」ですか?

2024年に厚労省研究班が公表した将来推計では、2025年の認知症の方の数は約471万人、2040年には約584万人と見込まれています。

「2025年に約700万人」という数字は、以前(2015年ごろ)の推計で広く使われていた認知症高齢者数の見通しです。その後の調査をふまえて推計し直された結果、最新では約471万人(2025年)に下方修正されました。古い数字と新しい数字が混在しているだけで、どちらかが「嘘」というわけではありません。なお、認知症の前段階とされる軽度認知障害(MCI)は、これとは別に数えられます。


まとめ|「疲れた」と感じたら、頼っていい合図です

「疲れた」という感覚は、弱さではありません。限界が近いこと、そして誰かの助けを借りていいことを、体と心が知らせている合図です。

今日、一つだけ行動してみてください。相談窓口に電話する、ケアマネジャーにメッセージを送る、地域包括支援センターの場所を調べてみる——どれでも構いません。

認知症介護には、さまざまな困りごとがあります。以下の記事も、状況に応じて参照してみてください。

あなたが今日も介護を続けていることは、それだけで大変なことです。


執筆者:宮田浩行
看護師・介護福祉士。医療・介護現場での経験15年(看護師8年・介護福祉士7年)。現在は医療ライターとして、現場目線の医療・介護情報を発信しています。


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