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利尿薬・降圧薬は夏に注意|高齢者の薬と脱水・熱中症対策

公開: 2026年7月23日

利尿薬・降圧薬は夏に注意|高齢者の薬と脱水・熱中症対策
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の診断・治療に代わるものではありません。 症状や対応については、主治医・かかりつけ医、または専門の相談窓口にご相談ください。

猛暑の中、利尿薬や降圧薬など複数の薬を飲んでいる親や祖父母の体調が心配になっていませんか。実は薬の種類によっては、夏の脱水・熱中症のリスクがふだんより高まることがあります。

この記事では、看護師・介護福祉士の視点から、注意したい薬の作用タイプ、家族ができる見守りのポイント、受診の目安までをわかりやすく解説します。自己判断で薬をやめる必要はありません。正しく知って、無理なく見守るための情報です。

なぜ「夏の薬」に注意が必要なのか―高齢者が脱水・熱中症になりやすい理由

高齢の方はもともと、体の仕組みの変化によって脱水・熱中症になりやすいといわれています。そこに暑さと薬の作用が重なることで、リスクがさらに高まることがあります。まずはその理由を整理しておきましょう。

体の水分量が減り、暑さやのどの渇きに気づきにくくなる

加齢に伴い、体に蓄えられる水分量そのものが少なくなっていきます。それに加えて、「のどが渇いた」と感じるセンサーの働きも鈍くなりやすく、水分をとるタイミングがどうしても遅れがちです。

暑さへの感覚も同様に鈍くなることがあり、本人は「そこまで暑いと思っていなかった」というケースも少なくありません。これは、室内にいても熱中症になり得る理由のひとつです。

さらに、腎臓の働きや汗をかく力も年齢とともに低下しやすく、体温や水分バランスを一定に保つ機能が追いつきにくくなります。環境省の熱中症予防情報や厚生労働省の資料、日本医師会の情報でも、こうした加齢による体の変化が高齢者の熱中症リスクを高める要因として挙げられています。

「薬が悪い」のではなく「薬と暑さが重なる」ことがリスクを高める

ここで、この記事のスタンスをはっきりお伝えしておきます。この記事は「危険な薬をやめましょう」という内容ではありません。利尿薬や降圧薬などの多くは、血圧や心臓、腎臓の状態を保つために必要があって処方されている薬です。

夏場は体からの水分が失われやすい季節です。そこに薬の作用が重なることで、ふだんより注意が必要になる、という理解が正確です。心配になっても、自己判断で薬を中止したり、量を減らしたり、飲むのをスキップしたりするのは避けましょう。気になる点は、かかりつけ医や薬剤師に相談するのが確実な方法です。

暑さそのものへの備えについては、高齢者の脱水・熱中症予防の記事でも詳しく取り上げていますので、あわせてご覧ください。

脱水・熱中症のリスクに関わる「薬の作用タイプ」を知っておく

ここからは、脱水・熱中症のリスクに関わりのある薬について、特定の商品名ではなく「作用のタイプ・一般的な分類」でご紹介します。ご家族が飲んでいる薬がどれかに当てはまったとしても、それ自体が問題というわけではありません。「こういう働きの薬なのだ」と知っておくことが、見守りの助けになるはずです。

尿を増やす・血圧を下げるタイプ

利尿薬は、尿の量を増やして体に溜まった余分な水分を外に出す働きを持つ薬です。夏は汗でも水分が失われやすいため、利尿薬の作用が重なると、脱水が思いのほか早く進んでしまうことがあります。

降圧薬は血圧を下げる働きを持つ薬です。脱水気味のときは、血圧が下がりすぎて立ちくらみやふらつき、転倒につながることがあります。ただし、同じ降圧薬でも成分や量、その方の状態によってあらわれ方は異なります。

糖尿病の治療で使われることのあるSGLT2阻害薬というタイプの薬は、尿の中に糖を排出する際に水分も一緒に出やすくなる性質があり、多尿・頻尿の原因になることがあります。体調不良の際には、医師の判断で一時的に休薬することもあります。

夜間の排尿が多いことでお悩みの方は、高齢者の夜間頻尿と水分の記事もあわせて参考にしてみてください。

汗を抑える・体温調節に影響するタイプ

一部の抗ヒスタミン薬や、過活動膀胱の治療薬、かぜ薬などに含まれる抗コリン作用という働きは、汗を抑える方向に作用することがあります。汗をかきにくくなると体に熱がこもりやすくなり、口の渇きを感じることも増えます。

また、向精神薬や抗うつ薬、抗てんかん薬、パーキンソン病の治療薬の中にも、暑さへの体の反応に影響しうるものがあるとされています。脳の体温調節そのものに関わるものや、汗のかき方を変えて熱を逃がしにくくするものなど、作用のしかたは薬によってさまざまです。すべてが同じように影響するわけではなく、「一部の薬では、脱水時にふだんと違う反応が出ることがある」と捉えておくとよいでしょう。

脱水時に体への負担が大きくなりやすいタイプ

血圧の薬の一種であるRAS阻害薬(体内の血圧調整のしくみに働くタイプ)は、体が脱水状態のときに服用を続けると、腎臓への負担が急に大きくなることがあるといわれています。一部の解熱鎮痛薬に含まれるNSAIDsという成分も、腎臓の血流を保つ働きに影響するため、脱水時は注意が必要とされています。

一部の糖尿病治療薬(ビグアナイド系と呼ばれるタイプ)は、脱水がきっかけとなって体に負担のかかる状態を招くことがあり、体調不良時には休薬の指示が出ることがあります。下剤の中にも、体の水分を失いやすくする方向に働くタイプがあります。

これらは「危険な薬」ということではなく、**「暑い時期は少し丁寧に見守りたい薬」**と捉えていただくのがよいと思います。どれも、あくまで一般的な傾向です。ご家族の薬が具体的にどうなのかは、かかりつけ医・薬剤師に確認するのが確実です。

家族ができる日常の見守り3つの柱

薬の種類を知ったうえで、次に大切になるのが日常の見守りです。特別なことではなく、次の3つを意識するだけでも変わってきます。

部屋の温度・湿度を「体感」でなく「数字」で管理

環境省の熱中症予防情報などでは、室温28℃以下・湿度70%以下が室内の一つの目安として示されています。ただし、これは「これ以下なら絶対に安全」という線引きではありません。日射や風通し、活動量、体調によって危険度は変わり、より正確には「暑さ指数(WBGT)」という指標が使われます。数字はあくまで目安として、こまめに見直すことが大切です。

また、エアコンの設定温度と実際の室温は、必ずしも一致しません。日当たりや部屋の広さによってズレが生じることもあります。そのため、温湿度計を1つ部屋に置き、数字で確認することをおすすめします。「暑くなさそう」という見た目の印象だけでは、判断がずれてしまうことがあるからです。

エアコンをつけたがらない高齢の方への対応については、高齢者がエアコンをつけない理由と対応の記事で詳しく解説しています。

「のどが渇く前」の水分・塩分補給を仕組み化

一般に、飲み物から1日1.2L程度が水分摂取の目安とされています。これは安静時のおおよその目安で、汗をかく時期はこれより多めが必要になります。一度にたくさんではなく、コップ1杯を数回に分けて、のどが渇く前にこまめにとる習慣が大切です。

⚠ 大切な注意: 心不全や腎臓病などで、主治医から「1日の水分量」の指示(水分制限)を受けている方は、その指示を最優先してください。良かれと思って水分を増やしすぎると、かえって体に負担がかかることがあります。夏の水分のとり方も、かかりつけ医・薬剤師に確認しておくと安心です。

塩分についても同様です。大量に汗をかいたときは水分と一緒に適度な塩分補給が望ましいとされますが、高血圧・心臓・腎臓の病気で塩分制限を受けている場合は、医師の指示が優先されます。ふだんの食事がとれているなら、追加の塩分が必ず必要というわけではありません。

食欲が落ちて食事量が減っているときは、食事に含まれる水分や塩分も一緒に減ってしまうため、いつも以上に気にかけておきたいところです。

見逃しやすいサインをチェック

次のようなサインは、脱水が進んでいる可能性を示していることがあります。

こうしたサインは、本人があまり自覚していないことも多いのが特徴です。隠れた脱水・熱中症については、高齢者の隠れ脱水・隠れ熱中症の記事で詳しく取り上げています。

現場でも、こんなことがあります。利尿薬と降圧薬を服用されている方が、猛暑の続いた週に急に口数が減り、いつもより反応がゆっくりになっていました。ご家族が「なんだかいつもと違う」と感じて早めに連絡してくださったことで、大きなトラブルにつながらずに済んだ、という一例です。小さな違和感を見逃さないというのは、現場で何度も実感してきたことです(※事例は個人が特定されないよう、複数の経験をもとに再構成しています)。

受診・相談の目安―どのサインで、どう動くか

「この症状は様子を見ていいのか、受診したほうがいいのか」は、多くのご家族が迷うところだと思います。分類名を覚える必要はありません。大切なのは、どんな様子のときにどう動くかです。日本救急医学会の「熱中症診療ガイドライン2024」も参考に、行動の目安を整理します。

まず涼しい場所で冷やして水分を(軽いサイン)

めまい、立ちくらみ、大量の汗、こむら返りといった症状で、意識がはっきりしている場合は、比較的軽い段階(分類ではI度)とされています。まずは涼しい場所に移動し、水分・塩分を補い、体を冷やしましょう。

ただし、**30分ほどたっても改善しない、水分が自分でとれない、症状が悪化するときは受診を検討してください。**特にこの記事で挙げたような薬を飲んでいる方は、いつもより早めに相談したほうが安心です。

すぐ医療機関に相談すべきサイン

頭痛、吐き気、嘔吐、体のだるさ、集中力や判断力の低下がみられる場合は、様子見を続けるのではなく、速やかに医療機関に相談・受診してください(分類ではII度にあたります)。

迷わず救急要請すべきサイン

次のような様子がみられる場合は、ためらわずに119番へ連絡してください。

これらは重い段階(分類ではIII度、また2024年のガイドラインで新たに設けられた最重症のIV度)にあたる可能性があります。「これくらいで救急車を呼んでいいのだろうか」と迷うご家族の声を、現場で何度も聞いてきました。意識の状態がおかしいと感じたときは、迷わず連絡してください。判断に迷うときは、救急安心センター事業(♯7119、実施している地域の場合)に相談する方法もあります。

薬のことはかかりつけ医・薬剤師に――「やめる」ではなく「相談する」

自己判断で中止・減量・スキップしない

繰り返しになりますが、ここでもう一度お伝えしたいことがあります。夏の脱水・熱中症が心配だからといって、自己判断で薬を中止したり、量を減らしたり、飲むのをスキップしたりすることは避けてください。

特に降圧薬や向精神薬、抗てんかん薬などは、急に服用をやめることでかえって体調を崩す可能性があるとされています。心配な気持ちは、薬をやめる理由ではなく、相談するきっかけにしていただければと思います。

「夏の飲み方」「体調不良のときの対応」をあらかじめ聞いておく

暑い時期の水分のとり方や、体調不良のとき(いわゆるシックデイ)に薬をどう扱うかは、薬によって異なります。大切なのは、あらかじめ主治医から渡されている個別のルールに従うことです。自分で「この薬は休んでいいはず」と判断するのではなく、迷ったときは処方元の医療機関や薬剤師に連絡しましょう。

次回の診察や薬局での受け取り時に、お薬手帳を持参して、家族も同席のうえで確認しておくと安心です。「夏場、水分が思うようにとれていないときはどうすればいいですか」「体調が悪いとき、いつもの薬は続けていいですか」といった質問を、あらかじめ投げかけておくとよいでしょう。日頃の服薬管理の工夫については、在宅での服薬管理の記事もあわせて参考にしてください。

一人で抱えない――介護者自身の心のケアとチームでの見守り

「気づけなかった」と自分を責めなくていい

脱水や熱中症のサインは、本人が自覚しにくいことが多く、家族がどれほど気をつけていても、完璧に防ぎきることは簡単ではありません。もし体調の変化に気づくのが少し遅れてしまったとしても、それはご家族の落ち度ではないと私は思います。

かかりつけ医・薬剤師・ケアマネ・訪問看護をチームに

見守りは、家族だけで抱え込む必要はありません。かかりつけ医、薬剤師、ケアマネジャー、訪問看護など、関わってくれている専門職はそれぞれの立場から力になってくれます。少しでも気になることがあれば、遠慮せずに相談してみてください。「相談していいのだろうか」と迷うくらいなら、相談したほうがよい、というのが現場で見てきた実感です。

まとめ

高齢の方は、体の水分量の減少や口渇感の低下により、もともと脱水・熱中症になりやすい傾向があります。そこに利尿薬や降圧薬などの作用が重なることで、夏場はふだん以上に注意が必要になることがあります。

とはいえ、これらの多くは生活を支えるために必要な薬であり、自己判断でやめるべきものではありません。室温・湿度を数字で管理し、のどが渇く前の水分・塩分補給を心がけ(水分・塩分の制限がある方は医師の指示を優先し)、体調のサインに気づいたら早めに相談する。この積み重ねが、無理のない見守りにつながります。

次のステップ

まずは、今日できることを1つだけ始めてみませんか。部屋に温湿度計を1つ置いてみる、あるいはお薬手帳を確認して次回の診察で「夏の飲み方」を聞いてみる。どちらか一方からで大丈夫です。

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