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人生会議とは?親と「もしものとき」を話す切り出し方【例文つき】

公開: 2026年7月22日

人生会議とは?親と「もしものとき」を話す切り出し方【例文つき】
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の診断・治療に代わるものではありません。 症状や対応については、主治医・かかりつけ医、または専門の相談窓口にご相談ください。

お盆に帰省して、少し痩せた親、同じ話を何度も繰り返す親を見て「そろそろ話しておいた方がいいのかな」と感じた。けれど、延命治療や最期の話をどう切り出せばいいか分からない。そんな戸惑いを抱える方は少なくありません。実は、家族や医療・介護の専門職と話し合ったことがない人は約7割にのぼります。あなただけではありません。この記事では、重くならずに親と「もしものとき」の話を始める5つの切り出し方と、話した内容の残し方、困ったときの相談先を紹介します。

帰省で気づいた「あれ?」を、そのままにしないために

「痩せたな」「同じ話を何度もするな」――久しぶりに会うから気づくこと

一緒に暮らしていると気づきにくい変化も、久しぶりに会うとはっきり見えることがあります。「あれ、前より歩くのが遅くなったな」「同じ話を繰り返すな」――これは決して珍しいことではなく、これまでの現場でもよく聞いてきた相談です。まずは何が変わったのかを、責めずに整理してみるところから始めましょう。具体的な観察ポイントは、お盆帰省で気づく親の変化チェックリストで詳しく紹介しています。

「弱ったかも」の背景にあるもの

歩く速さの低下や疲れやすさは、単なる老化のようにも見えます。ただ、その背景に「フレイル」と呼ばれる心身の虚弱状態が隠れていることもあります。フレイルは早めに気づき、生活を整えることで改善が見込める場合もあるとされる状態です。詳しくはフレイルかもしれません――家族が気づく初期サインと向き合い方をご覧ください。

なお、物忘れや同じ話の繰り返しが目立つ場合は、フレイルとは別に認知機能の変化が背景にあることもあります。中には治療によって改善するものもあるため、気になるときは早めにかかりつけ医か地域包括支援センターに相談してください。

でも「もしものとき」の話は、なぜか切り出せない

体の変化には気づいても、「もし今後、病気が重くなったら」「最期はどう過ごしたいか」という話題になると、急に言葉に詰まる。これは自然な反応です。生活の変化と違い、「もしものとき」の話は親の人生観そのものに踏み込む気がして、身構えてしまうからかもしれません。実はこの話し合いには「人生会議」という名前がついています。

人生会議(ACP)とは何か──「延命治療を決める場」ではない

アドバンス・ケア・プランニングの愛称、2018年に公募で決定

「人生会議」は、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)という医療・ケアの考え方に、厚生労働省が2018年につけた愛称です。全国から1,073件の応募を集めた公募で選ばれ、11月30日は語呂合わせから「人生会議の日」とされています。名前だけ見ると重々しく感じますが、もともと堅苦しい会議のことではありません。

「1回で結論を出す会議」ではなく「話し合い続けるプロセス」

2022年に日本の研究者グループがまとめた定義では、人生会議とは「必要に応じて信頼関係のある医療・ケアチーム等の支援を受けながら、本人が現在の健康状態や今後の生き方、さらには今後受けたい医療・ケアについて考え、家族等と話し合うこと」とされています。

ここで大事なのは2点です。ひとつは、一度で結論を出す場ではなく、体調の変化に合わせて繰り返し話し合うプロセスだということ。もうひとつは、家族だけで抱え込むものではないということです。専門職に入ってもらってかまいません。厚生労働省のガイドラインも2018年の改訂で「医療」に「ケア」という言葉を加え、暮らし全体を含めた話し合いへと考え方を広げています。

この記事が「延命治療の是非」を扱わない理由

ここで、この記事のスタンスをはっきりお伝えします。人生会議は、延命治療を「する」「しない」を決めさせる場ではありません。何を大事に生きたいか、どう過ごしたいかという価値観を、家族の間で共有していくためのものです。ですのでこの記事でも、特定の医療処置を勧めたり控えたりすることはしません。

そして決めるのは、あくまでご本人です。厚生労働省のガイドラインも「本人による意思決定を基本とする」という考え方を示しています。ご本人が自分で伝えられなくなったときには、家族等がご本人の思いを推し量りながら、医療・ケアチームと一緒に考えていくことになります。だからこそ、元気なうちに「何を大事にしたいか」を聞いておくことに意味があるのです。

話し合ったことがない人は7割弱――多くの家族が同じ状況

「知らない」72.1%、「話し合ったことがない」68.6%という現実

厚生労働省の令和4年度(2022年度実施・2023年12月公表)「人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査」によると、「人生会議」という言葉を知らない一般国民は72.1%。そして、人生の最終段階に受けたい医療・ケアについて**家族等や医療・介護従事者と話し合ったことがない人は68.6%**にのぼります。逆に、話し合ったことがある人は29.9%にとどまりました。

なお、この調査でいう「家族等」には、家族以外でも「自分が信頼して、自分の医療・ケアに関する方針を決めてほしいと思う人(友人・知人)」が含まれています。

この数字は、読者を責めるためのものではありません。むしろ多くの家族が、あなたと同じ状況にあるということです。

理由の1位は「きっかけがなかった」、2位は「何を話していいか分からない」

同じ調査で、話し合っていない理由(複数回答)を見ると、次のようになっています。

理由割合(一般国民 n=2,057)
話し合うきっかけがなかったから62.8%
知識が無いため、何を話し合っていいか分からないから31.0%
話し合う必要性を感じていないから21.8%
話し合いたくないから2.1%

最も多いのは「きっかけがなかった」62.8%、次いで「何を話し合っていいか分からない」31.0%でした。一方で「必要性を感じていない」という方も21.8%おり、話さないことを自分で選んでいる方も一定数いらっしゃいます。

ただ、上位2つを見ると、入口が見つからないだけ、何を話せばいいか分からないだけという方が多いことも確かです。だとすれば、今回の帰省がそのきっかけになるかもしれません。次の章では、重くならずに話を始める具体的な方法を紹介します。

「早めに」と言われても、ためらう気持ちも自然なこと

海外の研究では、事前に話し合っておくことで、本人の希望が周囲に知られて尊重されやすくなり、遺された家族のストレスや不安、抑うつが軽くなったという報告があります(オーストラリアで80歳以上の入院患者を対象に行われた研究など)。

一方で近年は、「話し合っておいても、実際に受ける医療が希望どおりになるとは限らない」という指摘も海外から出ています。国内の研究もまだ質問紙調査などが中心で、誰にでも当てはまると言い切れる段階ではありません。効果が保証されるというより、家族が迷ったときの手がかりが残る、という程度に捉えておくのが正確です。

それに、「今はまだ話せない」という選択も、決して間違いではありません。焦る必要はないのです。

すでに大切な方を見送られた方、いま向き合っている最中の方へ。話し合えないまま過ぎてしまうことは、少しも珍しいことではありません。そのときどきの判断は、その状況で選べる最善でした。この記事は、これから話す方のための道具にすぎません。

重くならない切り出し方 5つ

実は、先ほどの調査には「どんな出来事が話し合うきっかけになるか」という設問もあります。一般国民の回答で最も多かったのは「ご家族等の病気」54.8%、次いで「自分の病気」47.7%、「ご家族等の介護」40.7%でした。特別な決意ではなく、身近な誰かの体調の変化が、実際の入口になっているということです。以下の5つも、その延長線上にあります。

①身近な人の入院や体調の話をきっかけにする

いきなり「最期はどうしたい?」と聞くと身構えられてしまいます。親戚や知人の入院話を枕にすると、自然に話が始まります。前述のとおり、これは実際に最も多いきっかけでもあります。

「〇〇おじさんが入院したでしょ。もしお父さんが入院したら、って考えたことある?」
「最近テレビでも介護の話よく見るね。お母さんはどう思う?」

②「私も書いてみようかな」と自分(子世代)を主語にする

親に聞く形だと詰問のようになりがちです。まず自分の話として切り出すと、抵抗感がぐっと下がります。

「私、最近エンディングノートってやつ気になってて。お母さんも書いたことある?」
「もし私が倒れたら、って考えると不安になってさ。お父さんはどう考えてる?」

③食事や趣味の話のついでに「これからも大事にしたいこと」を聞く

好きな食べ物や趣味の話の延長で聞くと、深刻さがやわらぎます。

「お母さん、この煮物好きだよね。もし年とって食べられるものが減ってきたら、これだけは食べたいってある?」
「畑、今も楽しい?これからも続けられるようにするには、何があったらいいかな」

④通院や薬の話のタイミングに乗せる

かかりつけ医の診察やお薬手帳の話は、医療の話題への自然な入り口になります。

「今度の診察、私も一緒に行っていい?先生に聞いておきたいこともあるし」
「お薬、種類増えたね。この先どんなふうに過ごしたいか、先生にも伝えておく?」

⑤一度に全部聞こうとしない――何回かに分けていい

人生会議は1回で完結させる必要はありません。前章で触れた通り、繰り返し話し合うプロセスです。今日は価値観の一部を聞けただけでも十分。次の帰省、次の電話でまた少し聞けばいい、くらいの気持ちで構いません。

「今日はこのへんにしとこか。また電話するわ」
「前に言ってた話、あれからどう思う?気が変わってても全然いいよ」

話しておきたいこと/今すぐ決めなくてもよいこと

話しておくとよいこと(大事にしたい暮らし方・価値観)

本質的に大事なのは、「延命治療をするか」という個別の処置の可否そのものより、「何を大事に生きたいか」という価値観です。誰と過ごしたいか、何を楽しみにしているか。そうした話の積み重ねが、いざというときの判断材料になります。

「誰に託すか」も決めておきたいこと

もし親が自分で意思を伝えられなくなったとき、誰が代わりに気持ちを汲み取る役になるのか。きょうだいが複数いる家庭ほど、ここが決まっていないと後で迷いや対立が生まれます。厚生労働省のガイドラインでも、信頼できる人をあらかじめ決めておくことが重要とされています。同居家族に限らず、遠方のきょうだいや親しい友人でも構いません。

「もしお母さんが自分で言えなくなったとき、誰に決めてほしい?」

一度確かめておくだけで、いざというときの支えになります。

今すぐ決めなくてもよいこと(具体的な医療処置の可否など)

人工呼吸器や胃ろうなど、個別の医療処置についてまで今すぐ決める必要はありません。病状や本人の気持ちは変化するものです。細部を急いで固めるより、方向性を共有しておく方が現実的です。

もちろん、すでに「これは受けたい」「これは受けたくない」とはっきり決めている方は、その意思を書き残しておくことにも大きな意味があります。

「どこで、どう過ごしたいか」も立派なテーマ

自宅で過ごしたいか、施設や病院で過ごしたいかという生活の場の希望も、大切な価値観のひとつです。在宅での介護が難しくなるタイミングについては、在宅介護の限界サインと施設入所のタイミングで詳しく解説しています。

話した内容をどう残す? エンディングノートと法的効力

エンディングノート・事前指示書・リビングウィルの違い

言葉が似ていて混同されやすいので、簡単に整理します。

ただし、財産の分け方だけは例外です。エンディングノートに「財産は長男に」と書いても、それだけでは法的な効力はありません。相続の希望があるときは、民法で決められた形式の遺言書を別に用意する必要があります(作成は司法書士・弁護士や公証役場へご相談ください)。

「書けば法的に絶対」でも「書いても意味がない」でもない

ここは誤解が多いところなので正確にお伝えします。医療の希望について、日本にはこれらの書面の効力を保証する法律はありません。一方で、厚生労働省のガイドラインは「本人による意思決定を基本とする」という進め方を示しています。ガイドライン自体にも法的な強制力はありませんが、書き残された本人の言葉は、実際の現場でとても重い手がかりとして扱われます。

つまり「書けば絶対」でも「書いても無意味」でもない、というのが正確なところです。

残し方に正解はない――一行のメモでも記録になる

立派な書式でなくてかまいません。カレンダーの隅に「8/14 父:最後は家がいい と」と一行書くだけでも、後から家族で確認できる立派な記録になります。厚生労働省のガイドラインも、話し合った内容はその都度書き留めておくことをすすめています。

逆に、記憶だけに頼ると、いざというときに家族の間で「言った・言わない」になりがちです。ここは現場でも実際によく起きることなので、一行でも残しておくことをおすすめします。

ひとりで抱えなくていい――相談できる場所

相談先は、いまどの段階にいるかで変わります。

まだ介護保険を使っていない段階なら――地域包括支援センター

介護保険をまだ使っていない段階なら、まずは地域包括支援センターです。介護保険法にもとづき市町村に設置されている公的な相談窓口で、お住まいの地域ごとに担当が決まっています。「地域包括支援センター+市区町村名」で検索するか、市町村の窓口で確認できます。

かかりつけ医――病状や見通しを踏まえて相談できる

病状の見通しを踏まえた相談は、かかりつけ医が窓口になります。診察の機会に「今後についても少し聞きたい」と伝えてみましょう。

すでにサービスを使っているなら――ケアマネジャー/入院中なら医療ソーシャルワーカー

すでに介護保険のサービスを利用している場合は、担当のケアマネジャーが介護面の相談相手になります。入院中であれば、病院の**医療ソーシャルワーカー(MSW)**が退院後の生活も含めて相談に乗ってくれます。

訪問看護ステーション――在宅療養が始まってからの相談先

在宅での療養が始まってからは、訪問看護ステーションも身近な相談先になります(利用には主治医の指示書が必要です)。退院直後は特に不安が大きい時期です。退院後すぐ家族がやるべき3つの準備もあわせて参考にしてください。

まとめ:次の帰省、次の電話で

親と「もしものとき」を話せていないのは、決してあなたの家族だけではありません。厚生労働省の調査でも、多くの家族が同じ状況にあることが分かっています。大切なのは、一度で決着をつけることではなく、価値観を少しずつ共有していくことです。そして、まだ話せないという選択も尊重されるべきものです。

自宅でも、施設でも、病院でも、どこで過ごすかによって備えることは変わってきます。在宅で過ごすことを考える場合は、家族が在宅看取りに臨むための5つのポイントもあわせてご覧ください。

今日紹介した5つの切り出し方のうち、ひとつだけ、次に親と話すときに試してみませんか。あるいは、お住まいの市町村がエンディングノートを無料配布しているか調べてみるところからでも構いません。

参考資料

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