介護施設のAI研修は、①何の仕事に使うか、②入力してはいけない情報は何か、③誰が出力を確認するかを決めるところから始めると、内容を選びやすくなります。全職員が初めて触る段階なのか、すでに使い始めていて利用ルールが必要なのかでも、優先する内容は変わります。
この記事では、看護師・介護福祉士として現場に携わってきた立場から、施設長・管理者が研修を選ぶときの確認点を整理します。
まず決めたい、研修の3つの目的
| いまの状況 | 優先したい内容 | 研修後に確認すること |
|---|---|---|
| 職員の多くが生成AIを初めて使う | 基本操作、できること・苦手なこと、架空事例での文章作成 | 試したい業務を一つ選べるか |
| 職員が個人の判断で使い始めている | 個人情報、利用を認めるツール、出力の事実確認 | 入力してよい情報と相談先を説明できるか |
| 事業所として運用をそろえたい | 利用ルール、担当者、報告経路、見直し方法 | 誰が何を確認するか決まっているか |
「新しい機能をたくさん知る」だけを目的にせず、研修後の行動を先に決めておくのがポイントです。
誰に、どの順番で受けてもらうか
全員で基本を学ぶ方法と、管理者・現場リーダーから始める方法があります。勤務の都合だけでなく、研修後に質問を受ける人を確保できるかも考えてください。
例えば、リーダーが先に入力ルールと確認方法を整理し、全職員には共通の架空事例で練習してもらう形です。これは進め方の例であり、どの施設にも同じ順序が適するわけではありません。
90分なら、何を学べるか
以下は、コトノアの生成AI入門研修の構成例です。職種、参加人数、端末の準備状況に合わせて調整します。
| 時間 | 内容 | ねらい |
|---|---|---|
| 15分 | 生成AIの基本と注意点 | できることと限界を知る |
| 20分 | 文書作成の実演 | 依頼の仕方と出力の違いを見る |
| 35分 | 架空事例を使った演習 | 入力と修正を自分で試す |
| 15分 | 事実確認と入力ルール | 出力をそのまま使わない習慣をつける |
| 5分 | 質疑・次の一歩 | 自施設で確認することを決める |
実在する利用者の記録や患者情報は、研修素材に持ち込まない運用としています。「名前だけ消した実際の記録」で練習することも避け、最初から架空の教材を使います。
法人AI研修の内容・料金を見る / 社内共有用の研修案内PDFを読む
公的研修・民間研修・内製の違い
| 選択肢 | 向いている目的 | 申し込み前の確認 |
|---|---|---|
| 公的研修 | デジタル活用全般の基礎や推進役の育成 | 対象者、募集期間、AIを扱う範囲 |
| 外部講師による研修 | 自施設の課題に沿った演習・相談 | 医療・介護の題材、情報管理、成果物、料金に含まれるもの |
| 自施設の職員による研修 | 共通ルールの周知や継続的な練習 | 講師役の負担、教材の更新、質問の相談先 |
厚生労働省は2026年8月21日、令和8年度「介護デジタル中核人材養成研修」の募集開始を案内しています。生成AIだけを学ぶ研修と同じものではないため、対象者や内容を確認したうえで比較してください。厚生労働省:介護分野における生産性向上のお知らせ
見積もりで確認する費用
価格だけで比較すると、演習やルール作成が別料金だった、という違いを見落としやすくなります。次の項目をそろえて見積もりを確認しましょう。
- 研修時間と参加人数、オンラインか現地開催か
- 事前の打ち合わせと、施設に合わせた教材調整の範囲
- 配布資料、利用ルールのひな形、研修後の質問対応の有無
- 現地開催の交通費や、参加者が使うサービスの利用料
- 日程変更の扱いと、支払い条件
コトノアの各プログラムの料金と含まれるものは、法人研修ページにまとめています。社内で検討するときは、同ページのPDFも共有できます。実施条件を確認したうえで正式なお見積もりをお出しします。
補助金を使いたい場合
介護テクノロジー導入支援などの制度は、年度や都道府県、対象経費によって条件が異なります。AI研修を受ければ必ず補助対象になる、とは判断できません。 研修単体の費用を含められるか、契約前の申請が必要かを、所在地の自治体・支援窓口の最新募集要項で確認してください。
個人情報と出力の確認を、研修内容に入れる
個人情報保護委員会の生成AIに関する注意喚起では、個人情報を入力する場合の利用目的や、入力した個人データの取り扱われ方などを確認するよう求めています。「有料なら安全」「学習をオフにしたから何でも入力できる」と単純には判断できません。個人情報保護委員会:生成AIサービスの利用に関する注意喚起
研修では、次の区別を練習に含めてください。
- 練習用の入力:最初から作った架空事例、個人情報を含まない一般的な文章
- 実務での利用:事業所が承認したツール・契約・利用範囲と、既存の情報管理規程を確認してから判断
- 出力の利用:事実の追加や数値の誤りを人が確認し、診断やケア方針の最終判断をAIに委ねない
ルールのたたき台は、介護施設の生成AI利用ルール:5項目とひな形で紹介しています。
研修後、最初の2週間で確認すること
次は、定着を確かめるための進め方の例です。効果や時間短縮を保証するものではありません。
- 研修直後に、試す業務を一つと担当者を決める。
- 架空データ・個人情報を含まない題材で練習し、直した箇所を共有する。
- 1〜2週間後に、入力判断に迷った点と出力の誤りを振り返る。
- 実務へ広げる前に、管理者がツール・情報管理・確認体制を見直す。
「何分短縮できたか」だけでなく、確認にかかった時間や誤りも見てください。確認負担が増えているなら、使う業務や教材を変える判断が必要です。
よくある質問
AIを使ったことがない職員でも参加できますか?
初めての職員向けに基本から扱う研修を選べます。申し込み時に、端末の操作経験や参加人数を伝え、操作演習と講師の実演の割合を相談してください。
利用者の実際の記録を使ってもよいですか?
コトノアの研修では、実際の記録は使わず架空事例で練習します。氏名を伏せても、経過や家族構成から本人を推測できる場合があるためです。
何を依頼するか決まっていなくても相談できますか?
「職員が使い始めたのでルールを整理したい」「管理者から学びたい」など、今の状況から整理できます。8問・約1分のAI活用セルフチェックも検討の入口として使えます。
社内提案に使う資料
会議には、目的・対象者・実施形式・予算・情報管理の方針を一緒に持っていくと、話を進めやすくなります。コトノアの研修案内PDF(2ページ)には、内容・料金・講師・相談先をまとめています。
参考資料
- 厚生労働省:介護分野における生産性向上のお知らせ
- 個人情報保護委員会:生成AIサービスの利用に関する注意喚起等
- 個人情報保護委員会・厚生労働省:医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス
2026年9月6日更新。公的研修の案内を更新し、90分の構成例、費用の確認項目、研修後の進め方を追加しました。